ヨガの三角のポーズ(トリコナーサナ)は、立った状態で体を横に曲げ、全身で三角形を描くポーズです。 日常生活の中でどうしても生じてしまう体の左右のアンバランスを整えます。 いわゆる「体側のポーズ」の中で、最も人気のあるアーサナの一つになっています。

歪みを整える

三角のポーズでは、上半身を片方に傾け、骨盤から先を床と平行にします。 体を曲げた方向へと重心が移ってしまわないように、両方の足で力強く踏ん張ります。 それによって、左右のバランスが整えられ、全身の歪みが整えられていきます。

ウッティタ・トリコナーサナ

正式名称は「ウッティタ・トリコナーサナ」(Utthita Trikonasana)といいます。 「Utthita」は「伸ばした」、「Trikona」は「三角」という意味。手足を伸ばした状態で行うことが一つのポイントです。(ただし、ひざは伸ばし過ぎると負担がかかるので、軽く伸ばします)

「3」という数字が持つ意味

ヨガの世界では、「3(トリ)」という数字がいろいろと深い意味を持っており、「安定」や「バランス」を象徴する数字として重視されています。

インド古代医学の「トリ・ドーシャ」

ヨガと密接な関係があるインドの伝統医学「アーユルヴェーダ」では、3つの体質を意味する「トリ・ドーシャ」という考えが基本になっています。
それによると、人間の体は「ドーシャ」で構成されており、このドーシャには「風(ヴァータ)」「火(ピッタ)」「水(カファ)」の3種類があります。 3つの要素がしっかりと機能することで、体と心の健康が保たれるとしています。

宗教の「トリ・ムールティ」

また、古代インドの宗教では、神様が3つの形で存在していると考えられています。宇宙の創造主「ブラフマー」、宇宙を維持する「ヴシュヌ」、宇宙の破壊主「シヴァ」です。
この3つが一体であると考えるのが「トリ・ムールティ」。サンスクリット語で「3つの姿」を意味し、宇宙や人間のバランスを保つカギになるとされます。

トリ・グナ

このほか、心のエネルギーが3つの種類に分かれるとする「トリ・グナ」の概念があります。タマス(闇質)、ラジャス(激質)、サットヴァ(純質)の三種で、このバランスが人の感情や気質に大きな影響を与えるということです。

「安定」

現代社会においても三角には「安定」をもたらすと考えられています。3本足は凸凹した地面の上でもきちんと立つことができるという特徴があります。 これを利用したのがカメラの三脚です。

三角のポーズをするときも安定を意識することが大切になります。 体を左右いずれかに曲げたあとも、重心をなるべく左右均等に保つように心がけましょう。

動画

やり方とコツ

(1)準備:足を開いて立つ

足を開いて立ちます。肩幅二つ分くらいが目安になります。

(2)足の向きを変える

片方の足(右足)の指先を横に向けます。 もう一方の足(左足)の指先は右斜め前に向けます(少し内股になる感じ)。
前足のかかとを後ろ足のかかとと一直線に揃えます。

(3)両手をあげてTの字

両手を肩の高さにあげ、体で「Tの字」を作ります。両腕は大きく広げましょう。肩から指先までを真っ直ぐに並べます。

(4)スライド

息を吐きながら上半身を右側へとスライドさせます。

(5)折り曲げる

息を吐きながら上半身を右へ曲げていきます。
ウエストから折り曲げるのでなく、股関節から折り曲げるようにします。

(6)右手を置く

右手を右足の外側または内側の床に置きます。床に届かないときは足首やスネなどに置きます。
上半身の両側をゆがめないで置ける場所に置きます。

(7)体重を左右均等に

左右両足の裏に均等に体重をのせます。
左足でもしっかり踏ん張るのがポイントです。左脚を強くして、かかとの外側を強く床へ押して体を安定させます。

(8)左腕をあげる

左腕を天井のほうへ向けます。肩の付け根の延長線上に伸ばしていきます。

(9)視線を上に

視線はやさしく左手の親指へ向けます。難しい場合は正面や床に向けてもかまいません。

(10)骨盤がかぶさらない

胴体と骨盤は脚の上で一直線をキープします。 上(左側)の骨盤が、下のほうにかぶさってこないようにすることが、とても重要です。
また、頭が下に落ちたり、前に倒れたりしないように気をつけましょう。

(11)お腹を薄く

おへそを内側に引いて、お腹を薄くします。

(12)キープと深い呼吸

この状態で30秒〜1分ほど深呼吸します。
ポーズをキープしている間は、呼吸のたびに背骨の伸びを感じます。

(13)反対側

脚を入れ替え、反対側も同様に行います。

効果

左右のアンバランスを整える

現代社会では、左右バランスの崩れがある人が多いと言われます。左右の違いは、腰痛などのトラブルを起こします。「片側だけが痛い」とか「ひねったときに特に痛い」といった腰痛は、左右の歪みと関係している場合が多いと考えられています。
三角のポーズを行うことで、体のわきの筋肉がしっかりと伸び・縮みし、骨盤や背骨が整えられます。アンバランスの解消に役立ちます。
体のバランス改善は、心の安定にもつながるとも言われています。

ウエストの引き締め

腹斜筋が刺激されることで、ウエストの引き締め効果も期待できます。

胸が開いて活力アップ

三角のポーズで胸を開くことで深い呼吸ができるようになり、倦怠感の解消にもつながります。全身に活力がみなぎり、元気になります。