ヨガの行法は、ほとんどが息を深く吐きながら行いますが、それは、息を吐くと体がくつろぎ筋肉がやわらぐからです。その反対に、息を吸うと筋肉は硬くなります。体が硬い人には、浅い胸式呼吸をしている人が多く、首や肩が緊張してこりやすくなっています。
呼吸は肉体の支配者
ヨガの専門家によれば、呼吸の浅い人がいろいろなスポーツなどの健康法に取り組んでも、いっこうに調子がよくならず、むしろ余計に肩がこったり、腰が痛くなったりと、逆に体調をくずしたりしてしまうこともあるようです。
呼吸こそは肉体の支配者であり、健康づくりの要だということです。
呼吸を止める
ヨガのトレーニングでは、まず心と体をほぐし安定させるために、息を吐く練習をしますが、最終的には、息を止める練習をします。息を止めた状態が、最も心と体が統一された状態だからです。
3種類の呼吸
呼吸には、吸う(プラク)、吐く(レチャク)、止める(クムバク)の3種類があります。この3種類の呼吸は、わたしたちの感情の動きとはまったく無縁ではなく、とても密接に関係しています。
吸う力が強いとき
たとえば、嫌な気持ちになった時や、悲しい時、不安な時、苛立っている時などは、たいていわたしたちは吸う息にカを入れています。
吐く力が強いとき
その反対に、楽しい時、くつろいでいる時、物事がうまくいっている時には、吐く息にカが入っています。
息を止めているとき
さらに「やるぞ!」と気合いが入っている時や、「あれは何だろう?」と息をつめて何かを見る時など、意識をぐっと集中している時は、わたしたちは息を止めているものです。
つまり、わたしたちは、心が緊張している時には息を吸い、くつろいで弛緩している時は息を吐き、統一・集中している時には息を止めているのです。
体の<緊張/リラックス>
この呼吸と感情の原理は、そのまま肉体にも同じことが言えます。息を吸うと、重心が上にあがって首や肩が緊張するので、わたしたちの体は硬化し、動作しにくくなります。
その反対に、息を吐くと、重心が下にさがって安定し、くつろぎますので、体がリラックスし、動作しやすくなるのです。
まずは腹式呼吸
ヨガの完全呼吸法は、「腹式呼吸法」と「胸式呼吸法」と「肩式呼吸法」をミックスしたものですが、まず最も大事なのは、腹式呼吸を身につけることだとされます。
下腹をふくらませる
腹式呼吸のやり方は、下腹に両手をおいて、息を吸いながら下腹を風船のようにふくらませ、息を吐きながら、お腹と背中をくっつけるくらいの気持ちで、お腹をへこませます。(これがどうしてもうまくいかない人は、動物のように四つばいになって、だらりとカを抜いてみるといいようです。)
息をするだけで運動に
腹式呼吸をすると、息を吸えばお腹がふくれ、息を吐けばお腹がへこむのがよく感じられるでしょう。
運動不足の解消に
腹式呼吸が寝ていても座っていても立っていても出来るようになればしめたもの。呼吸を続けているだけで、軽い運動を行っていることと同じになりますから、ふつうに生活しているだけで、運動不足を解消することができます。
腸の活性化に
腹式呼吸をしている時は、常に下腹にカがこもっている状態ですから、知らず知らずに腹筋力はつくうえ、肩コリはとれ、内臓マッサージになって腸のぜん動運動は高まり、下腹部のぜい肉もしだいにとれてきます。また、姿勢もよくなり精神も安定してきます。