古代中国から伝わる東洋医学では、宇宙の万物はつねに二つの相反する力のバランスで成り立っていると考えられています。プラスとマイナス、陽と陰、求心力と遠心力、集中(緊張)と弛緩(リラックス)・・・などです。そして、何事も二つの力のバランスがとれているときに、最も安定した理想的な状態になるとされます。

人間にとってのバランス

人間も例外ではありません。バランスが重要です。バランスがうまくとれてさえいれば、仕事でも勉強でもプライベートでも最高のパフォーマンスを発揮することができます。

交感神経と副交感神経

わたしたちの生活は、眠る(=リラックス)状態と起きて行動している状態との二つに大きく分けられます。ぐっすりと眠るためには、自律神経の「副交感神軽」がうまく働いてくれなければなりません。一方、起きて快調に活動するためには、自律神経の「交感神経」が働く必要があります。二つの自律神経のバランスがとれていて、かつ両者のバトンタッチがスムーズにいくのがベストです。

メリハリ

別な言い方をすれば、仕事でも勉強でも、最高に能率を上げるためには、最高にくつろがねばならないということです。しっかり休んでスッキリとすることで、集中力が高まり、スタミナも持続しやすくなります。

逆に、この交替がうまくいかないと、寝ても寝ても寝足りない、朝起きてもボーッとしているというふうに、非常に非能率的なくり返しになります。大事なのはメリハリ。いつもスケジュールがハードな人は、日頃から全身の緊張をほぐして、じゅうぶんにくつろぐようにしたいところです。

ヨガの役目

ヨガは、生活のバランスを回復するのに役立ちます。そもそも、ヨガの目的自体が、一口でいうと「バランス」です。「偏りがない、とらわれのない」生き方をするために、呼吸とポーズで体と心を結びつけていきます。

シャバ・アーサナ

ヨガの「シャバ・アーサナ」は、別名「くつろぎのポーズ」とも呼ばれ、自律神経のバランスを取り戻す代表的なリラックスポーズです。あおむけに寝て、手と足を投げ出し、目を軽く閉じてロをぽかんとあけ、地球の重力にまかせ、だらりと力を抜きます。

ポーズとポーズの間に行う

シャバ・アーサナは、ヨガのポーズとポーズの合間に必ず行います。ポーズによって、心も体も意識統一が行われ、一種の興奮状態になりますが、このくつろぎのポーズで充分に全身を休ませることができます。そして、この休息の間に、先に行ったポーズの刺激が、体のすみずみにまでいきわたるとされます。

過食をおさえるダイエット

ヨガによる自律神経のバランス回復は、ダイエットにも大きなプラスになります。

現代社会では、ストレスのはけ口を食べ物に求め、その結果太ってしまう人が多いです。必要以上に食べてしまう過食症状は、実は、自律神経の乱れと関係しています。

満腹感と空腹感

自律神経は、脳の視床部、視床下部と連結し、密接な関係をもっていますが、視床下部といえば、満腹感や空腹感を感じる中枢のあるところです。したがって、自律神経が、食欲中枢をコントロールすることになります。

体が必要としている分だけ食欲を感じ、余分な食物はとらないように調整する機能が自律神経にはあるわけですが、ここに異常をきたすと、食欲に際限がなくなり、食べても食べても満腹感を得られないという状態におちいってしまいます。

背骨を刺激するポーズ

過食症状は、自分の意志でおさえられずに進んでしまいますが、これは、自律神経が人間の意識と無関係に自動的に働いているからです。過食は、ちょうど室温調節するリモコンが故障して、適正な温度が保たれなくなった状態と同じです。そこで、過食による肥満対策として、自律神経を整えることが大切になってきます。

自律神経は背骨をとおっています。このため、背骨を刺激するポーズを行えば、自律神経の働きが良くなります。体の内と外の両面から機能のズレを調整し、正常のバランスを取り戻していくことができます。