ハタヨガのユニークな点は、体と心を包括的にとらえた行法になっている点にあります。その思想は、「タントラ」と呼ばれる宗教の影響を受けています。
体は小宇宙
ハタヨガでは、肉体を「小宇宙」としてとらえています。私たちの生きる宇宙を「大宇宙」として、それに呼応するものいとして人間の体を小宇宙として位置づけているのです。
ハタヨガは、「タントラ」の影響を受けたとされています。人間の体を小宇宙とする思想も、タントラから来ていると考えられています。
タントラとは
タントラとは、7世紀以降にインドなどに広まった宗教あるいは思想の一つです。それまでタブー視されていた迷信や欲望を受け入れ、現世での利益を追求しました。
現実的な幸せ
そして、スピリチャルな幸せだけでなく、健康や長寿といった現実的な幸福を求めました。世俗的な欲望を捨て、禁欲に生きるのでなく、快楽をポジティブに受け入れました。
生活に密着した思想
こうした発想をベースとして、タントラでは、肉体を聖なるものとして扱うようになりました。肉体は魂や心の「オマケ」ではなく、それ自体が尊いものであり、より高めていくことが大事だとされたのです。
タントラはより生活に密着した思想、あるいは「密教」として当時のインドの庶民に歓迎されたそうです。8世紀から12世紀頃に最盛期を迎え、ヒンドゥー教や仏教にも影響を与えたといいます。
タントラヨガの一つ
そして、そのうねりはヨガの世界にも広がりました。タントラの影響を強く受ける形で、ハタヨガという全く新しいタイプのヨガが誕生したのです。
タントラに影響されたヨガを「タントラヨガ」と呼びますが、ハタヨガはタントラヨガの代表的なものの一つです。
女性原理
タントラは、女神の崇拝を特徴一つとしています。「シャクティ崇拝」と呼ばれるものです。
具体的には、静的なエネルギーを「男性原理」と位置づけ、動的なエネルギーを「女性原理」とします。この2つが結合すると、メンタルな面での幸せを味わえることになります。
体内の「女神」を目覚めさせる
ハタヨガにも、女性原理であるシャクティと、男性原理であるシヴァを合一させるという考え方が取り入れられているといいます。
この考え方においては、人間の頭のてっぺんに「シヴァ神」がいます。そして、肛門の近くの会陰部(えいんぶ)に女神であるシャクティ妃がいます。
頭のてっぺんに上昇
ハタヨガでは、ポーズや呼吸法によって、眠っているシャクティ女神を刺激し、目覚めさせますそして、シヴァのいる頭頂部にまで上層させることで、シヴァとシャクティを結合させます。これによって、幸福を得ることができるとされています。
このシャクティは、クンダリニーとも呼ばれてます。