紀元前からインドで続けられてきたヨガは、10世紀をすぎたころ、大きな転換点を迎えます。体を動かす「ハタヨガ」という流派が誕生したのです。

「体」のヨガ

ハタヨガができるまでのヨガは、瞑想が中心でした。ひたすら座って、心に働きかけるというプロセスです。

こうしたなか、ハタヨガは、古典的なヨガの瞑想を重視しつつも、体を動かして、体を目覚めさせるという発想を取り入れました。そして、様ざまな身体技法が開発されたのです。

座るだけでないヨガ

アーサナ(ポーズ)は古典ヨガにおいて、数種の坐法を中心にして、瞑想のために快適で安定した姿勢で坐るためのものでした。

そもそも、アーサナは、「座る」を意味する「アース」という言葉から来ており、座法や座り方のことを指します。

これに対して、ハタヨガでは、座法に限らず、さまざまなアーサナが開発されました。種類も一気に増えました。

ハタヨガでは、立ちながら体を動かしていきます。それは、まさに今日で言うところの「ヨガのポーズ」です。

「健康法」になったヨガ

ハタヨガの登場によって、ヨガは健康法になりました。

それまでのヨガは、宗教的、哲学的な色彩が強いものでした。ハタヨガもそれまでのヨガの流派と同様に宗教であり哲学です。しかし、ハタヨガでは、プラスアルファ―で「肉体」の扱い方を説きました。

肉体を軽視せず、心と同じように大事なものとしてとらえたのです。

世界に広まるきっかけ

これが、後にヨガが西洋など世界へと広まった原因となります。現代人が国や民族に関係なくヨガを楽しんでいるのは、ハタヨガの登場によってヨガが健康法の領域へと幅を広げたからだといえます。

ハタヨガの意味

力のヨガ

ハタヨガのハタには「力」という意味があります。つまり、ハタヨガとは、「力のヨガ」あるいは「力を通じて行なうヨガ」という意味になります。

太陽と月

さらに「ハタ」という言葉には、教義的な意味も込められています。ハは「太陽」、タは「月」を表しており、ハは「陽」のエネルギー、タは「陰」のエネルギーとして解釈されています。「陰と陽」のように相対する二つのものを表現しているということです。

ヨガは合一という意味です。したがって、ハタヨガには、自然や宇宙に存在し人間に内在する、太陽と月に象徴される二つの力を調和させ、合一するという意味が込められているのです。