ハタヨガの開祖

ゴーラクナート(Gorakhnath)は、ハタヨガの事実上の開祖として伝えられている人です。ゴーラクシャ・ナータやゴーラクナータとも呼ばれます。

その出生には不明な部分が多いようですが、10世紀~13世紀ごろに活躍したと考えられています。ヨガの歴史上で最も重要な指導者の一人といわれています。聖者マッチェンドラナートの弟子とされています。

教典を執筆

ゴーラクナートは、ハタヨガを体系的にまとめました。具体的には、「ハタ・ヨーガ」と「ゴーラクシャ・シャタカ」という2冊の教典を書いたと言われています。ただ、「ハタ・ヨーガ」のほうは、現在残っていません。

現存する教典「ゴーラクシャ・シャタカ」は100ページくらいの短めの教典です。(「シャタカ」とは百を意味するそうです)。この教典が土台となり、その後、ハタヨガの教えて伝えられていきます。

15世紀~16世紀ごろに登場する「ハタ・ヨーガ・プラディーピカー」「ゲーランダ・サンヒター」「シヴァ・サンヒター」といったハテヨガの重要な経典も、「ゴーラクシャ・シャタカ」が模範や基盤になったとされます。

ナータ派の誕生

ゴーラクナートを中心とするヨガの一派は「ナータ派」と呼ばれました。ヨガは、ナータ派の修行者たちによって目ざましく発達し、それがハタヨガと呼ばれ今日に至っています。

また、ナータ派の中でも、とりわけゴーラクナートを師と仰ぐ人たちは、「ゴーラクナーティン」と呼ばれました。

オープンな考え

ゴーラクナートは、オープンな考え方を持っていた指導者だと考えられています。ヒンドゥー教徒もイスラム教徒も同じように弟子として受け入れたそうです。

こうしたゴーラクナートの考えは、ナータ派の思想の土台となり、ナータ派による社会改革の運動へとつながっていきます。

伝説

ゴーラクナートはインド北部、ネパール、チベットにおいて、今でも伝説の人物として語り継がれています。

その伝説には神話的な要素が多く、雨を自在に操ったり、死人を生き返らせたり、といった超能力を持っていたとも言われています。

劇や詩のテーマに

現在、ヒンドゥー教の寺院の中にはゴーラクナートの姿が壁などに描かれているところもあります。また、一部の人たちは、ゴーラクナートは今も生きていると信じているといいます。

また、ゴーラクナートとその弟子たちの物語は、詩や劇としても描かれ、後世に伝わっていきました。