「お腹痩せ」は、男女を問わず多くの人に共通するテーマです。下腹ポッコリやわき腹のぜい肉を何とかしたいのに、うまくいかないという悩みはよく耳にします。 ヨガはお腹のダイエットにも効果を発揮できます。

腹圧

ヨガによるお腹痩せダイエットでキーワードになるのが「腹圧」という言葉です。腹圧とは、自分のお腹にかける圧力のこと。 排便や排尿、出産のときに大切な働きをします。

空洞を小さくする

腹圧を強めると、お腹の空洞(腹腔)が縮まります。その結果、お腹まわりのボディラインがへこむことになります。

呼吸にあわせて腹部引き上げ

ヨガの中には、この腹圧を強めるポーズがあります。呼吸にあわせてお腹を下から上に持ち上げたり、内側に向けて圧をかけるような動きです。

これらのポーズによって、腹圧をアップさせる感覚を目覚めさせ、それを習慣にすることができれば、お腹のダイエットはぐんと成功しやすくなります。

形状記憶

私たちの筋肉には「形状記憶」という性質があり、筋肉がいつも同じ使われ方をしていると、意識して力を入れなくても筋力が働くようになります。 このため、1日のうちに何度も意識的に腹圧をかけているうちに、腹圧がかかった状態が当たり前になるということです。

脂肪が燃える

腹圧がかかっているときは、腹筋がそれだけ仕事をしていることになるため、周辺の脂肪も燃えやすくなります。 インナーマッスルも発達し、引き締め効果をもたらします。

ドローイン

腹圧を使ってお腹を引き締める方法を「ドローイン」といいます。 食事制限によるダイエットだと、お腹以外の部分が先に細くなってしまい、お腹痩せが成功しないことも多いです。 それに比べてドローインはお腹まわりに直接働きかけるため、効きやすいと考えられています。

マハー・ヴェーダ・ムドラー

ヨガのポーズの中で、腹圧によるお腹痩せ(ドローイン)に適しているとされるのが「マハー・ヴェーダ・ムドラー」(Maha Vedha Mudra)です。

このポーズは、蓮華座のスタイルであぐらを組んだあと、両手を床について体全体を持ち上げます。少しアクロバチックな動作であり、最初は難しいと感じる方もいらっしゃるようです。

本来は、エネルギーの覚醒を目指したムドラー(体勢)ですが、お腹のドローインの方法としても有効だと言われています。

ポーズの写真

マハー・ヴェーダ・ムドラーの完成形の姿は、以下のような感じです。

写真1(正面)→

写真2(正面)→

写真3(横)→

意味と目的

マハー・ヴェーダ・ムドラーの「マハー」はサンスクリット語で「偉大な」を意味します。「ヴェーダ(Vedha)」には「知的な」「鋭い」といった意味があります。「ムドラー(Mudra)」は、ヨガで手や体でつくる印という意味です。

マハー・ヴェーダ・ムドラーの一番の目的は、気のエネルギー(プラーナ)のチャンネルを整えることにあります。それによって、心を自分の内側に向けるとともに、体の各部位を目覚めさせていきます。内臓も刺激され、活性化するとされます。

お腹をリフトアップ

マハー・ヴェーダ・ムドラーでは、お腹全体を思いっきりリフトアップすることになります。お尻を宙に浮かせるときに、腕の力で持ち上げるのでなく、胴体全体が自ら引き上がるというイメージです。そうしないと、腕に負担がかかりすぎて、お尻が地面から一瞬離れたとしてもその状態をキープするのが難しくなります。内臓も引き上げます。

インナーマッスルがフル稼働

お尻を浮かせている間、お腹の空洞(腹腔)がめいっぱい絞られます。このとき、普段あまり使わないようなインナーマッスルがフル稼働します。他ではあまり味わえないような感覚です。

エネルギーとともに組織が上昇

マハー・ヴェーダ・ムドラーを行うと、眠っているクンダリニーが目覚めると言われています。

クンダリニーとは、人間の体内で眠っている生命エネルギーです。ふだんは肛門の近くでとぐろを巻いているとされます。このエネルギーを覚醒させ、上昇させるのが、本ムドラーの目的です。(クンダリニーについてはこちらの記事をご覧下さい)。

エネルギーが上昇する感覚は、ゆるみがちだった腹部にギアチェンジをもたらします。私たちの内臓や脂肪は地球の重力とともに、だんだんと下のほうに垂れていく宿命にあります。しかし、エネルギーが体内で上昇する意識が目覚めれば、体の組織も上へ、上へと向かっていくことができます。

やり方

マハー・ヴェーダ・ムドラーの基本的な手順のイメージは次のとおりです。

(1)蓮華座(パドマ・アーサナ)を組む。
※蓮華座は両足をクロスさせ、反対側の太ももの上にのせるヨガの座法です(詳しくはこちらの記事をご覧下さい)。蓮華座が難しい人は、ふつうのあぐらで座ります。

(2)深い呼吸をする。

(3)両方の手のひらを体の左右の床につける(お尻の横あたり)。床まで手が届かない人は背中を曲げる。

(4)体を持ち上げてお尻を宙に浮かせる。
※お尻を後ろに引くようにすると、浮きやすくなります。恥骨をおへそに向かって引き上げるようなイメージを持つといいでしょう。

(5)その状態でしばらく静止。